テスター
☆☆☆

ホームルームが終わるのを見計らい、俺は郁乃と中野いい前田さんに声をかけた。


「昨日の郁乃の様子を教えてくれないか?」


「うん。でも昨日は一緒に帰らなかったから、よくわからないよ?」


「どうして一緒に帰らなかったんだ?」


2人は仲がよくて、いつも一緒に登下校している。


その様子を俺も何度も見かけていた。


「昇降口までは一緒だったんだけど、郁乃は教室に忘れ物をしたって言って戻って行ったの。あたしは待ってるって言ったんだけど、すぐに追いつくから先に帰ってって言われて、それで……」


そこまで言って俯いてしまった。


郁乃の言葉通り帰ってしまったことを、後悔している様子だ。


「郁乃は教室にひとりになったってことか?」


「たぶん。あたしたち、昨日教室を出るのが遅かったから、忘れ物を取りに戻ったときは郁乃一人だったと思う」


「そうか……」


顎に指を当てて呟く。


なにかひっかかる部分があるけれど、それがなにかわからない。


なんだっけ……?
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