テスター
☆☆☆

いなくなった4人は放課後教室にいた。


それなら、放課後教室に残っていればなにかがわかるかもしれない。


そうとわかるとはやる気持ちが抑えられない。


早く放課後になってほしくて落ち着かない気分だ。


今日が午前中授業で本当によかった。


4時間の授業は瞬く間に過ぎて行き、待ちに待った放課後がやってきた。


終わりのホームルームを終えて、みんなそれぞれ教室から出て行く。


今日は警備員の巡回も早い時間に行われるようで、教室に残る時間はごくわずかだ。


俺はみんなが教室から出て行くのを見送り、ゆっくりとカバンに教科書をつめて行った。


「守屋、早く帰れよ」


教室から出る前に先生が声をかけてきた。


「はい」


返事をして先生の後ろ姿を見送れば、完全にひとりになる。


俺は教科書をしまう手を止めて静かな教室内を見回した。


いつもと変わらない景色でも誰もいないだけで少し異様な雰囲気を感じる。


4人はここにいて、そして誰かに連れ去られたんじゃないだろうか?


美少女という共通点を見ればおそらく、テスターに……。


そこまで考えてゴクリと唾を飲み込んだ。


テスターの噂が本当なら、誘拐した少女たちの顔は切り取られているはずだ。


「そんなことない。千紗は無事だ。千紗は……」


呪文のように口の中で繰り返す。


千紗の長いまつげ、綺麗な鼻筋、ぷっくりとした唇。


それらが切り取られてしまうなんて想像するのも恐ろしい。


千紗はきっともとの姿のまま俺の元に帰ってきてくれる……!
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