テスター
郁乃はそう言ってから、思い出したように首を曲げて倉庫内を確認した。


「他の2人は?」


聞かれて、あたしは左右に首を振った。


「え?」


意味が理解できなかったようで、郁乃は眉間に眉を寄せた。


「……死んだの」


あたしの言葉に郁乃が一瞬息を飲んだ。


ヒュッと、空気が喉を通る音が聞こえてきた。


「嘘でしょ……」


「本当だよ。あの女、どんなことでもする。あたしもまぶたを切り取られたんだから」


「じゃ、じゃあ戻ってきたら、あたしの胸を?」


郁乃の言葉にあたしはうなづいた。


テスターは容赦なく郁乃の胸を切り取り、そして自分の胸と付けかえるはずだ。


そうなる前に、どうにかここから脱出しないといけない。


あたしは両足をそろえて、思いっきり床を蹴飛ばした。


ガンッと大きな音が倉庫の中に響く。


「ちょっと、何する気?」


「誰もいないなら、この倉庫を壊して外に出るしかないじゃん」


長年使われていない木製の倉庫だ。


頑張れば壊すことができるかもしれない。


郁乃は大きくうなづき、あたしと同じように床を蹴りつけた。


ガンガンと音が響き渡るが、倉庫自体が壊れる気配は見られない。


想像しているよりも、よほどしっかりと作られているみたいだ。
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