テスター
「壊れて、壊れてよ!」


額に汗が滲み、体が熱を帯びてくる。


それでもあたしたちはやめなかった。


絶対にここから脱出してやる。


その気持ちが強かったから。


それなのに、無常にも足音がこちらへ近づいてくることに気がついてしまった。


テスターはすぐに戻ってくると言っていたけれど、本当だったみたいだ。


あたしと郁乃は足を止めて顔を見合わせた。


郁乃の顔からは血の気がうせていて、唇まで青くなっている。


きっとあたしも同じような顔をしていることだろう。


ひどいストレスから吐き気がこみ上げてくる。


足音はどんどん近づいてくる。


テスターが戻ってくれば、郁乃は……。


そこまで考えたとき、倉庫の前で足音が止まった。


郁乃が唾を飲み込む音が聞こえてくる。


倉庫のドアがゆっくりと開かれて、新しいナイフを握り締めたテスターが目の前に現れた。


あぁ……もう、終わりだ。
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