テスター
希望が消えうせてすべてが暗転していくようだった。


テスターが大切そうにナイフを握り締めて倉庫の中に入ってくる。


と、その瞬間だった。


テスターの背後から突然人が割り込んできたのだ。


体を押されたテスターはバランスを崩して膝を突く。


「千紗!!」


あたしの名前を呼んだのは久典だった。


ここに拘束されてから何度も思い出したその人が、今目の前にいる。


それが信じられなくて、あたしは唖然としてしまった。


テスターが体を起こし、ナイフを久典へむけた。


久典は寸前のところでナイフをかわすと、足元に置かれている袋に視線を落とした。


それはテスターが使っているものだった。


「邪魔をするな!」


テスターが叫び声を上げて再び久典へ向けてナイフを振り上げる。


久典は身をかがめ、袋の中から出ていたなにかを握り締めていた。


襲い掛かってくるテスターへ向けて、それを差し向ける。


途端にバチバチッという音がして、テスターはその場に倒れこんでいた。


久典が手にしているのは黒い箱。


あたしたちを襲ったスタンガンだとすぐにわかった。


久典は倒れたテスターからナイフを奪い、テスターの顔に突きつけた。


痛みにもだえていたテスターは大きく息を吐き出し、久典を睨み上げた。
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