テスター
「お前、テスターか?」


久典の声は震えていた。


こんな血まみれの倉庫内を目の当たりにして、気が動転していてもおかしくないのに必死に両足で立っている。


「そうよ。私のことを知っているの?」


テスターはどこか愉快そうな声色で言った。


この状況でも、まだ楽しんでるようで寒気がした。


「どうしてこんなことをするんだ!」


「理由なら、知ってるんじゃないの?」


テスターはゆらりと体を揺らして立ち上がる。


久典は両手でナイフを握り締めた。


「顔か」


「そうよ。それに体もね」


テスターはそう言うと顔の包帯に手をかけた。


久典が目を見開く。


しかし包帯の下から出てきたのはつぎはぎだらけの醜い顔。


久典はそれを見た瞬間絶句してしまった。
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