テスター
☆☆☆

「テスターが実際にいたら怖いけど、交通事故も怖いからなぁ」


校門を出たところで久典が言った。


「そうだよね。なかなか退院もできないみたいだし」


あたしは久典と共通の知人のことを思い出して答えた。


この人は一ヶ月前交通事故にあい、まだ入院中なのだ。


「久典の妹さんも可愛いから、テスターがいるとすれば気をつけないとね」


「あいつは大丈夫だよ。まだ小学生だから」


「小学生が狙われないとすると、相手は大人の顔を望んでるってことかな?」


「そうなんじゃないか?」


そんな話をしている間に家はもう目の前だ。


別れてしまうのが惜しくて、あたしたちは足を止めた。


「じゃ、明日の朝も迎えにくるから」


「いいよそんなの。申し訳ないし」


慌てて左右に首を振る。


「俺が来たいんだよ。じゃ、また明日」


返事をする前に久典は背を向けて歩き出してしまった。


そんな久典の姿が見えなくなるまで見送って、あたしは家に入ったのだった。
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