規制アプリ
相手を負かしたときに体育館内にどよめきが沸いたのは、とても気持ちがよかった。


あたしは自分の試合が終わると体育館の壁際に座った。


大好きな体育の授業でつい素が出てしまったけれど、気をつけないといけない。


話しかかられてもボソボソと小さく低い声で返事をして、それ以外はすべてうつむいて体育の時間をやり過ごした。


そして、蕾の番が来た。


「蕾頑張って!」


すでに自分の出番を終えて、しっかりと勝利を収めた樹里が声をかける。


しかし蕾はその声に反応する余裕もないようで、フラフラとコート内に入っていった。


蕾もかなり運動神経がいいので、相手も強い。


少し油断したら簡単に点を入れられてしまうような相手だった。


正直、この試合で勝ち負けが決まると言ってもいいくらいの相手。


それなのに蕾はコ-ト内でも体をフラフラと揺らし、ラケットを持つ手にも力が入っていない。


相手から羽が飛んできても、それを打ち返す力が出ないようで何度もラケットを落としてしまう。


そのたびに体育館内には呆れた声が響き渡った。


驚いたことに、蕾を心配する声はほとんど聞こえてこないのだ。


ただ勝負に勝つか負けるか、今はそれだけが大切みたいだ。


改めてB組の体育熱を感じる。
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