規制アプリ
☆☆☆

どれだけ拭いても、コーヒーのかかった雑誌は読むことができなくなっていた。


机は塗れた雑巾で拭けば綺麗になったけれど、その臭いは簡単には取れないまま1時間目の授業が始まっていた。


数学の先生が教室へ入ってきた瞬間顔をしかめ「なんだこの教室は、ちょっと臭うから窓を開けてくれ」と言い、その瞬間樹里がこちらへ向けて睨みつけてきた。


あたしは首をすぼめて数学の教科書で顔をかくし、やり過ごす。


謝ったし、ちゃんと片付けもした。


本当だったこれ以上のことは起こらないはずだった。


「あの子ってちょっと変だよね」


樹里がそんな会話を始めたのは昼休憩のときだった。


友人がいないあたしは、自分の席で一人でお弁当を食べていた。


「わかる~! 樹里にコーヒーかけちゃうんだもんね」


同意をしたのは蕾だ。


蕾は樹里たちとお弁当を囲みながらも、机の上には手鏡を置いている。


「ありえないでしょ。まだ臭いんだけど」


文句を言いながらこちらを睨みつけてくるのがわかる。


あたしは途中で箸を止めてうつむいた。


悪気はなかったとわかっているはずなのに、こうして大声で文句を言われるなんて思っていなかった。


居心地が悪くて、今すぐ教室を出て行きたくなってしまう。
< 13 / 194 >

この作品をシェア

pagetop