規制アプリ
《来栖樹里に画鋲を飲まされる。帰宅してから吐いたが、血が混ざっていた》


《野口重行に階段から突き飛ばされて、足の小指を骨折する》


読み進めるうちに涙がこぼれ落ちていた。


片手で遺書を持ち、片手で自分の口を覆って泣く。


ひどすぎる仕打ちに吐き気までがこみ上げてきた。


そして、すべてを読み終えたとき、あたしはこれを警察に提出するつもりでいた。


ここまで明確に記されていればきっと大切な証拠になるだろうから。


でも……その時、あたしのスマホが勝手に起動したのだ。


画面を確認して目を見開いた。


それはついさっき屋上から飛び降りた伊代からのメッセージだったのだ。


メッセージに本文はなく、URLだけが張られている。


少しとまどってから、あたしは伊代にメッセージを送った。


《亜里沙:無事だったの?》


送ってから、血にぬれた伊代の姿を思い出す。


確か首が逆向きにねじれてはいなかったか?


あの状態で生きているなんて考えられないことだった。


送ったメッセージにはいつまで待っても既読がつかないし、さっきのメッセージが本当に伊代が送ってきたものだという確信もなかった。


本当ならこんな怪しいメッセージ無視しているはずだ。


でもこのときのあたしは気が動転していた。


友人の死を目撃したこと。


遺書の内容の衝撃。
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