規制アプリ
☆☆☆

あたしが田中先生を好きになるなんてありえなかった。


優しく声をかけられて、嬉しがってみせていただけだった。


そうすればあの男はきっと引っかかり、あたしに手を出してくるはずだから。


そして、呆れるほど簡単に騙されてくれた。


翌日学校へ行くと、田中先生が休みだと伝えられた。


昨日あんなことがあったのだから、出勤できるはずもなかった。


伊代を自殺に追い込んだあの男の顔を見なくてすむと思うと、心底せいせいした気分になった。


授業中にゴミを投げられることもなく、休憩時間にイジメられることもない１日。


それは少しつまらないと感じるくらい、暇なものだった。


前の学校なら心から友人だと思える子たちを楽しく過ごせていたけれど、ここでは違う。


どれだけ話しかけられたって、心からの友人なんて１人もできそうにない。


「お前、なにか知ってるんだろ」


昼休憩になると、珍しく一樹が近づいてきた。


「え？」


あたしはお弁当から顔を上げて首をかしげる。


「田中のことだ」


その言葉にすぐに察しがついた。


田中先生が休んでいるのはあたしのせいだと思っているみたいだ。


一樹の勘の良さに驚く。
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