規制アプリ
あたしが近づいていくと樹里はあからさまに警戒した表情になった。


「あのさ、あんたってなんでいつも誰かをイジメてんの?」


その質問は予想外だったようで、樹里は目を丸くしてあたしを見つめた。


「前にも誰かをイジメてたんでしょう? その相手、自殺したって聞いたけど?」


もちろん、伊代のことだ。


樹里は一瞬あたしから視線を外して、そしてフッと口元を緩めて笑った。


「地味なくせに、イジメられるとヘラヘラして笑いだして、イラついたからイジメた」


樹里はあたしと伊予が友人だったことを知らない。


だからこんな風に伊代をバカにする言い方をしたんだろう。


もう誰も樹里の味方ではないのに、なにも変わっていないのだとわかった。


そして樹里の言葉を聞いた瞬間、自分の中でなにかがブツリと切れる音が聞こえてきた。


あぁ、気まぐれで樹里になんて話かけるんじゃなかった。


平穏なはずの1日が崩れ落ちていく音が聞こえてくる。


あたしは樹里の胸倉を掴んで無理矢理立たせていた。


自分のものとは思えない強い力が出ていることに驚く。


「ちょっと、なに!?」


樹里が焦った声を上げるが、あたしは力を緩めない。


「ちょっと今から遊びに行こうよ」


「はぁ!? なに言ってんのあんた」


「あたしに逆らっていいの? あの動画、ネットにUPしようか?」


ささやくと、樹里がサッと青ざめた。


「嫌なら黙ってついてこいよ」


あたしは樹里を睨みつけてそう言ったのだった。
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