規制アプリ
青ざめて見上げてくる樹里の顔を2度、3度と殴りつける。


これにはさすがに一樹も動いた。


「やめろ!!」


叫んで止めに入る一樹を見てあたしはニンマリと笑う。


「樹里を助けたかったら殴ってみなよ」


そう言うと、一樹は拳を握り締めた。


あたしに殴りかかろうとする拳は再び自分の頬を打つ。


「あはははは! ほら、もっともっと! じゃないと樹里があたしに殴り殺されるよ?」


あたしは笑いながら樹里の頬を殴りつける。


それをとめるために一樹は自分を殴る。


それはとても滑稽な光景だった。


事情を知らない相手が見ればお笑い番組のワンシーンに見えたことだろう。


笑いながら樹里を殴りつけていると、樹里はすぐに意識を失ってしまった。


あたしの下でグッタリと力をなくす樹里を見て「弱いなぁ」と呟く。


「どうする? 樹里、気絶しちゃったけど」


一樹にそう聞いた瞬間、巨体が横倒しに倒れこんでいく。


倒れこんだ一樹の顔はボコボコ晴れ上がり、目は口の端から血を流している。


「あれ、もしかして一樹も気絶しちゃったの? 自分を殴るのに手加減なしとか、笑えるんですけどぉ?」


声をかけながら一樹に近づいていく。


一樹は白目を向いて倒れ、少しも反応しない。


あたしは一樹の横に膝をついてその呼吸を確認した。
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