規制アプリ
その目は釣りあがっている。


「お前、なに前田のこと泣かしてんだよ！」


樹里はどなるやいなや、あたしの机を思いっきり蹴り上げていた。


ガンッと大きな音が教室内に響き渡り、すでに登校してきていた生徒たちの視線を感じる。


さっきの子は前田さんと名前だったみたいだ。


名前がわかったことを内心嬉しく感じながら、無表情で樹里を見上げる。


「ちょっとは泣くなり、反論したりすれば？」


蕾が鏡片手に呆れた声を出す。


「だよな。無表情すぎてキモイ」


重行はそう言って粘ついた笑みを浮かべた。


一樹だけは大して興味もなさそうにあたしを見ている。


その目は人を射抜くように見えて、咄嗟に視線をそらせた。


なにもしてこないからこそ、一番怖いと感じる相手だった。


それから、あたしが前田さんを泣かせたことはあっという間に教室中に広まっていた。


もちろん、樹里たちが広めたのだ。


それに、実際に現場を見ていた生徒たちもいる。


なによりその噂を前田さん本人が否定しなかったことが大きかった。
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