規制アプリ
☆☆☆

ホームルームの最中にも蕾の顔色は悪いままだった。


鏡を見られないことに加えて、クラス中から笑われてしまったショックが大きいのだろう。


田中先生のホームルームが終わってからも、蕾は樹里たちの会話に参加しようとはしなかった。


それを見た重行がこれ見よがしに蕾をイジリはじめる。


「まさか、本当にウンコだったのか? なんかこの辺臭いんだよなぁ」


そう言って蕾の席を指差している。


「どうしたの重行、昨日はあんなに調子悪かったのに、今日は調子よさそうじゃん」


樹里に言われて重行は一瞬青ざめた。


昨日の悲劇を思い出したのだろう。


だけどすぐに明るい表情を取り戻して「昨日は体調が悪かったんだよ」と、言い訳をしている。


本当に、どこまでも調子のいい人間みたいだ。


そんなことを言われても、蕾は自分の席から動かなかった。


相変わらず鏡を取り出そうとしているけれど、何度も失敗して、端からみると変な動きを繰り返しているようにしか見えない。


「ねぇ蕾、本当に今日はどうしたの? 変だよ?」


樹里は容赦なくそう言う。


蕾は肩を震わせて青い顔をあげた。


「ちょっとね……」


「本当に大丈夫? 保健室行ったほうがよくない?」


蕾の顔は朝に比べてもずいぶんと悪くなっている。


さすがの樹里でも心配そうな表情に変わった。
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