規制アプリ
相変わらず湿っぽい場所に気分まで陰鬱になってきてしまう。


周囲を見回してみても花のひとつも咲いていない。


花壇でも作れば少しは華やかになるのにと、勝手なことを思っていると、樹里の平手打ちが飛んできた。


パンッと音がして、体が横倒しに倒れる。


遅れて右頬に痛みが訪れた。


右手で頬を包み込んで顔をしかめる。


樹里の華奢な体の中に、どうやったら今みたいな力が眠っているんだろう。


しびれる痛みについ樹里を睨みつけたとき、その手に光るものが握られているのがわかって息を飲んだ。


ハサミだ!


咄嗟に立ち上がり、逃げ出そうとする。


しかし足を踏み出した先にいたのは一樹だった。


一樹はニヤついた笑みを浮かべてあたしの前に立ちはだかる。


一樹の横にはスペースがあるけれど、とても逃げ切れるとは思えない。


背中にスッと汗が流れていった次の瞬間だった。


ジャキンッと背後で音がしていた。


あたしは凍りつき、動けない。


何かが地面に落下していく。


恐る恐る視線を下げて確認すると、それは紺色の制服の一部だった。


背中を切られたのだとわかり、振り返る。


樹里が目の前でハサミを振りかざしている。


「イヤァ!」


さすがに悲鳴を上げていた。


必死になって両腕で顔をガードする。


樹里の狙いはそこではなかった。


樹里はあたしの制服の袖を更に切り刻み、ジャキジャキとハサミの音を鳴らす。
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