規制アプリ
「先生……」


樹里たちは先生の足音に気がついて逃げ出したみたいだ。


「声が聞こえてきたと思ったら、こんな……」


ボロボロになったあたしを見て先生は絶句する。


目の前の光景が信じられないようで立ち尽くしてしまった。


「大丈夫です、ありがとうございます」


そう言う声が震えていた。


立ち上がろうとしたけれど、体も震えていてうまく立ち上がれない。


咄嗟に先生が体を支えてくれて、どうにか立ち上がることができた。


「誰にやられた?」


その質問には答えられなかった。


あたしは無理矢理笑顔を浮かべて「本当に大丈夫ですから」と、繰り返す。


正直先生を巻き込みたくはなかった。


これはあたしが自分から選んだ道だ。


「でも、その格好のままじゃ家にも帰れないだろ」


そう言われてあたしはもう1度自分の姿を確認した。


ケガはしていないといっても、とても帰れるような状態ではなかった。


このまま帰って両親と鉢合わせすることがあれば、嘘をついてきた意味もなくなってしまう。


仕方ないから、体操着で帰るしかなさそうだ。


この制服は捨てて、こっそり新しい替えを買おう。


そう思ったときだった。


「制服なら予備のものがあるから来なさい」


先生にそう言われたのだった。
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