規制アプリ
☆☆☆

先生に連れられて来たのは保健室だった。


中には保険の先生の姿はないが、勝手にロッカーを開けて制服を取り出してくれた。


「これ、勝手に来て帰っていいんですか?」


あらゆる事情で制服を代えないといけなくなった生徒のためのものだ。


「大丈夫だ。廊下にいるから、着替えたら呼びなさい」


先生はそう言うとあたしひとりを残して保健室を出た。


あたしは少し躊躇したが、体操着で帰るよりも制服で帰るほうが怪しまれることもないので、素直に着替えることにした。


幸い、下のブラウスは無傷だから、そのまま着ることができた。


制服の上着だけ着替えて先生を呼ぶ。


切り刻まれた制服は替えの制服が入っていた袋に詰め込んだ。


こんなもの、誰にも見られるわけにはいかない。


「サイズはピッタリみたいだな、よかった」


先生はそう言って袋の入った制服へ視線を向けた。


本当ならイジメの証拠となるものだ。


だけどあたしには、そんなもの必要なかった。


「それは捨てておいてください」


そう言うと、先生は一瞬とまどったように視線を泳がせた。


なんと言えばいいのかわからない様子で喉からうめき声をもらす。


「あたしは大丈夫ですから。制服、ちゃんと洗濯して返します。今日はありがとうございました」


それだけを早口で言い、逃げるように保健室を後にしたのだった。
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