規制アプリ
「本当に悪い。そんなつもりじゃなかったんだ」


そんなつもりじゃなく突き飛ばすなんてことありえないが、一樹は必死に弁解している。


その光景に蕾と重行の2人はただオロオロするばかり。


樹里の味方をしても、一樹の味方をしても自分の立場が悪くなるからだ。


「大丈夫?」


結局樹里は蕾の手を借りて立ち上がった。


泣きそうな顔のまま制服の汚れを払って一樹へ視線を向ける。


「ねぇ、どうしてあたしを見てくれないの?」


その質問に一樹はビクリと肩を震わせた。


「別に、意味なんてねぇーよ」


一樹が小さな声で返事をする。


そしてそのまま逃げるように教室を出て行ってしまったのだ。


「ちょっと一樹!」


樹里が追いかけようとするが、重行が先に動いていた。


「なにがあったのか聞いてくるから、樹里は待ってて」


さすが自らパシリになる男だ。


行動が早い。


樹里は呆然として2人の後ろ姿を見送っていたのだった。
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