規制アプリ
☆☆☆

「ねぇ、一樹のあれ、どう思う?」


2時間目が終わった休憩時間中、樹里が蕾にそんなことを聞いている声が聞こえてきた。


一樹は休憩時間に入るとすぐに教室を出て行ってしまい、重行はそれを追いかけて行った。


教室に残っているのは樹里と蕾の2人だけだ。


蕾は手鏡を取り出そうとしては思い直し、手を引っ込めている。


やっていることは昨日と変わりないが、鏡への強い恐怖を植えつけることに成功したことが伺えた。


「樹里を避けてるように見えるよね」


本人がいないのをいいことに、蕾は素直な感想を伝える。


今の一樹の状態を見ると、きっとみんな同じ感想を言うだろう。


「だよね。あたし、どうして避けられてるんだと思う?」


更に樹里は質問を重ねた。


普段あれだけ自分勝手にふる舞っているのに、一樹のことになると途端に自信をなくすみたいだ。


「わからないけど……。樹里はなにもしてないよね?」


「うん。なにもしてない」


樹里は力強くうなづいた。


一樹に嫌われるようなことはしていないと、自信があるみたいだ。


「だとしたら考えられるのは……」


蕾はそこで言葉を切って樹里を見た。


樹里は真剣に蕾の言葉に耳を傾けている。


こんな真剣な表情をしている樹里を見たのは、転校してきて始めてのことだった。
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