規制アプリ
机の上にボロボロになった体操着を置いて呆然と立ち尽くす。


こんなものを来て体育に参加することはできない。


「なにぼーっとしてんの? 早くしないと授業始まるよ?」


さっさと着替えを終えた樹里がわざとらしく声をかけてくる。


「樹里、早く行くよ」


蕾に声をかけられて、2人で笑い声を上げながら教室を出て行く。


ひとりになったあたしはそっと樹里の机に近づいた。


机の上にはたたまれた制服と、飲みかけのペットボトル。


体育の後にこれを飲んでいる姿がありありと浮かんでくる。


あたしは樹里のペットボトルの蓋を開けて、ポケットから取り出した錠剤を2個入れた。


蓋を閉めてしっかりと振ると、錠剤が溶けていく。


乳白色のスポーツドリンクに、錠剤が溶けて見えなくなると、あたしはほくそ笑んだ。


ほらね、うまく言った。


ペットボトルを元の場所へ戻したそのときだった。


不意に教室前方のドアが開いて悲鳴を上げそうになった。


授業開始まであと1分。


もう誰も戻ってこないと思っていたのに。


警戒したその時、入ってきたのは田中先生だった。
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