記憶ゲーム
☆☆☆
それから朝の会が始まる5分前まで僕はトイレにこもっていた。
幸い、啓治たちは僕を見つけることができなかったようだ。
教室へ戻ると啓治と大夢がこちらを睨みつけてきているけれど、それを無視して自分の席へついた。
「坂口君、大丈夫だった?」
クラスメートの女子が心配そうな声で後ろから声をかけてきてくれる。
僕は前をむいたまま「平気だよ、ありがとう」と、答える。
そんなに心配なら、すぐに先生を呼んできてくれればいいじゃないか。
と、内心では悪態ついた。
みんな、そうことはしてくれない。
後からチクったとか、かばったとか言われるのが嫌だからだ。
だけど完全な悪人にもなりたくないから、すべてが終わった後で心配だけはしてくる。
自分は味方だから、うらまないでねと言いたげに。
梨乃は、そういうことしなかったのにな。
不意にそう考えて、誰もいない机に視線を向ける。
とたんに胸が何かに刺されたように痛んだ。
僕は胸の辺りの制服を拳でギュッと握り締める。
梨乃がいなくなった一ヶ月。
今朝のお母さんの言葉を思い出す。
正確には梨乃がいなくなって29日目だ。
僕がそれを忘れるわけがなかった。
梨乃がいなくなってから毎日、僕は1人で利のを探し続けているんだから。
それから朝の会が始まる5分前まで僕はトイレにこもっていた。
幸い、啓治たちは僕を見つけることができなかったようだ。
教室へ戻ると啓治と大夢がこちらを睨みつけてきているけれど、それを無視して自分の席へついた。
「坂口君、大丈夫だった?」
クラスメートの女子が心配そうな声で後ろから声をかけてきてくれる。
僕は前をむいたまま「平気だよ、ありがとう」と、答える。
そんなに心配なら、すぐに先生を呼んできてくれればいいじゃないか。
と、内心では悪態ついた。
みんな、そうことはしてくれない。
後からチクったとか、かばったとか言われるのが嫌だからだ。
だけど完全な悪人にもなりたくないから、すべてが終わった後で心配だけはしてくる。
自分は味方だから、うらまないでねと言いたげに。
梨乃は、そういうことしなかったのにな。
不意にそう考えて、誰もいない机に視線を向ける。
とたんに胸が何かに刺されたように痛んだ。
僕は胸の辺りの制服を拳でギュッと握り締める。
梨乃がいなくなった一ヶ月。
今朝のお母さんの言葉を思い出す。
正確には梨乃がいなくなって29日目だ。
僕がそれを忘れるわけがなかった。
梨乃がいなくなってから毎日、僕は1人で利のを探し続けているんだから。