記憶ゲーム
「アキナちゃんは、人殺しをする父親を黙って見ている子だったんですか?」


先生の目の色が変わるのがわかった。


「なんだと?」


「この子たちはみんな、先生の娘なんですよね? じゃあ、アキナちゃんも同じだったのかと思って」


「アキナは違う! 心優しい子だ!」


先生は怒りに任せたような声で怒鳴る。


「そうですか。じゃあ、この子たちは先生の子供とは似ても似つかないんですね」


僕の言葉に先生が動きを止めた。


目を見開き、口をポカンとあけた状態で少女たちを見つめる。


少女たちもどう反応していいのかわからない様子でとまどっている。


「おかしいですね。みんなアキナちゃんに似ているって言ってたのに、優しくないなんて」


僕は話しかけながらゆっくりと体を起こした。


「それはっ……」


先生は返す言葉を失っている。


先生は自分で理想の子供を作り上げたと思っているが、アキナちゃんとの決定的な違い、欠陥ともいえるものを突きつけられたのだ。


目の前にいる僕を攻撃することなんて忘れてしまったかのように、挙動不審になっていた。


「アキナちゃんは自分のお父さんが人殺しをしようとしていても、ただ見ているだけなんですか?」


「そんなことはない!」


「じゃあ、この洗脳は失敗ですね?」
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