記憶ゲーム
だいたい、人の記憶をどうやって画面に映すんだよ。


「すっげー! それってさ、ゲームに使うイヤホンから記憶を取り出せるんだろ?」


大夢が目を輝かせて言う。


確かに、啓治のゲーム機には白いイヤホンがつけられている。


「そういうこと! じゃ、さっそく誰かの記憶を取ってゲームしてみようぜ!」


啓治がそう言った瞬間嫌な予感がした。


咄嗟に席を立って逃げ出そうとしたが、一足遅かった。


僕は後ろから腕をつかまれ、そのまま床に倒されていたのだ。


うつぶせに倒れて背中に馬乗りになられた僕はすでに身動きが取れない状態だ。


素早い動きの啓治に大夢が拍手をしている。


僕は肺が圧迫されて呼吸が苦しくなる。


「どけろよっ!」


どうにか声を絞り出すが、そんなのを聞き入れる啓治じゃない。


苦しんでいる僕を見て高笑いをしている。


「すぐにどいてやるよ」


啓治はそう言うと、嫌がる僕の耳にイヤホンをつけた。


記憶を取り出せるというそれにサッと青ざめる。


どんな記憶でも、こいつらのゲームにされるのは嫌だった。


必死に左右に首を振ってイヤホンを振り落とす。


しかし、ホッとしたのはつかの間だった。


啓治の重みがなくなったかと思ったら、今度はゲーム画面を眼前に突きつけられていた。
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