記憶ゲーム
☆☆☆

「おい、何度やっても告白OKしてもらえねぇじゃねぇか!」


2時間目の授業が終わったとき、むっつりとした顔で啓治がそういってきた。


「え?」


「ゲームだよゲーム!」


大夢が僕の机を叩いて言う。


「そんなこと言われても……」


ゲームがクリアできないのは僕のせいじゃない。


そう言おうとしたのを、啓治がさえぎった。


「このゲーム、実際に告白OKな場合はもっと勝率が上がるんだ。お前、K子ちゃんに振られたんだろ、だからゲームの難易度が高くなってクリアできねぇんだよ!」


教室中に響く声で言われて、一瞬時間が止まってしまったかと思った。


次の瞬間ニヤニヤと笑う2人の顔が視界に入ってきて、息を飲む。


こいつら、わざとこんなことを言ってるんだ!


カッと頭に血が上って右手で拳を作る。


それを啓治の頬にぶつけそうになったとき「いい加減にしなよ!」と声が聞こえてきて、注意がそれた。


見ると委員長が青い顔をして僕たちに近づいてくる。


「なんだ、またお前か」


啓治は小さく舌打ちをする。


たとえ僕に殴られていても、啓治ならきっと痛くもかゆくもなかったことだろう。


だからこんなに余裕そうな顔でいられるのだ。
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