記憶ゲーム
☆☆☆

啓治の言うことは間違ってない。


僕はいつでも女の子に、梨乃に助けてもらってきた。


こんな風に教室内で啓治と大夢にからかわれていたら、すぐに声をかけてくれていた。


それが、梨乃がいなくなって今度は委員長に取って代わっただけだった。


きっと、みんなにはそう見えていることだろう。


僕はトイレに駆け込んで冷たい水で顔を洗った。


このままじゃダメだと思うのに、どうしても一歩を踏み出すことができない。


梨乃にも、委員長にも助けてもらうばかりだ。


「今度は僕が助ける番なのに……!」


だから、僕は必死に梨乃を探し続けている。


それでも見つけられない。


すぐにでも見つけてあげたいのに。


つらい思いをしているなら救い出してあげたいのに、それもうまくいかない。


僕は下唇をかみ締めて、悔しさを押し殺したのだった。
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