記憶ゲーム
始まったゲームは子供たちを誘拐するゲームだったのだ。


誰を狙うか、どこで誘拐するか、どうやって連れ去るか。


そんな選択肢がいくつもでてきて、誘拐に成功すればゲームクリアとなる。


「なんだよこのゲーム。なにかのバグか?」


啓治はプレイしながらも首をかしげている。


こんなのが先生の記憶であるはずがない。


僕も画面を見ながらどんどん気分が悪くなっていくのを感じていた。


ただのバグにしてはやけに気持ちの悪いバグだ。


この町では半年前から誘拐事件が多発していて、全国ニュースにもなっているから余計になった。


「これじゃまるで先生が犯人みたいだな」


啓治が何気なく呟いた言葉に、僕たちの間に流れている時間が停止するのを感じた。


すべてがスローモーションのように見える。


水道が緩んでいて時々落ちる水滴の音が、やけに大きく響き渡った。


「はん……にん?」


僕は啓治を見つめて言った。


啓治も自分の呟きの意味に感づいたのか、目を丸くして僕を見た。


大夢が「ひっ」と小さな悲鳴を上げる。
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