記憶ゲーム
声に反応して振り向くと、同じクラスの宇多啓治(ウダ ケイジ)と竹前大夢(タケマエ ヒロム)の姿があった。


この2人の姿を見ると無条件で顔をしかめてしまう。


「よぉ~! 愛ちゃん!」


啓治が僕を見るなり口の端をニタリとあげて近づいてきた。


僕は気づかなかったふりをして自分の席へ向かう。


「なに無視してんだよ!」


そういわれた次の瞬間背中に衝撃を感じて、僕は前のめりに倒れこんでいた。


啓治が僕のランドセルを蹴ったのだ。


床に倒れこんだ僕を見て近くにいた女子たちが飛びのく。


「あははは! なに、なんでもないところでこけてんだよ!」


大夢が僕を指差して笑う。


僕はキッと2人をにらみつけたけれど、それでひるむわけじゃない。


「なんだよ。女のくせに」


啓治はそう言って、今だ倒れこんでいる僕の上にまたがって仁王立ちをした。


「僕は女だ」


「愛なんて名前で、そんなに細くて白いくせに、男だって?」
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