記憶ゲーム
☆☆☆

今日は学校の近くの公園にこっそり自転車を持ってきていた。


「お前、やるなぁ」


放課後になり、公園まで自転車を取りに来た僕へ向けて啓治が関心した声を上げた。


そう言う啓治も今日は自転車だ。


といっても僕みたいに隠したりはしていなくて、堂々と学校まで乗ってきていた。


「ま、まぁね」


曖昧に返事をして苦笑いを浮かべる。


自転車を持ってきたのはもちろん先生の車を追いかけるためだった。


でも、こうして啓治と２人で先生を追うことになるとは思ってもいなかった。


２人して自転車で学校へ戻り、社員駐車場へ向かう。


社員駐車場の奥には駐輪場があるから、そこに自転車を置いて影に隠れている予定だ。


スマホで時間を確認すると、終わりの会が終わってから３０分が経過している。


先生たちがどのくらい仕事をして帰るのか、僕にはわからなかった。


先生を待っている間、僕らはスマホでゲームをしたり、こっそり持ってきた飴玉を食べたりして時間をつぶした。


そして１時間が経過した頃、啓治に「おいっ」と声をかけられて僕は顔を上げた。


見るとようやく先生が校舎から出てきたところだった。


グレーのスーツを着て、ビジネスバッグを持っている。


僕が放課後先生に会ったときに持っていたカバンとは、やっぱり違うみたいだ。


先生はそのまま車に乗り込んで走り始めた。


「行くぞ！」


啓治の言葉を合図にして、僕たちも自転車をこぎ始めたのだった。
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