記憶ゲーム
名前は確かに女っぽいかもしれない。


だけど愛というのはとてもいい意味を持つ単語で、6年生ともなればみんなそれを理解しているはずだった。


男につけても、女につけてもいいんだよと、お父さんは言っていた。


ただ、白くて細いことは否定できなかった。


色白で日焼けしないのはお母さんに似たんだと思う。


細いのは、たぶん食が細いから。


自分では普通に食べているつもりだったけれど、気がついたら周りの子たちのほうがずっと多く食べていることにこの前気がついた。


下手したら、女子の方が僕よりも食べているかもしれない。


「お前さ、そんなに睨んできても全然怖くねぇんだよ」


大夢が啓治の横でニヤニヤと笑って立っている。


「お前が啓治に勝てると思ってんの?」


大夢は自分では手を出さず、啓治をたきつける役を担っている。


一番要領のいいやつだと思う。


「僕は男だ。そこをどけよ」


僕はそれでも啓治を睨み続けた。


それこそ、目に力を入れすぎて痛くなるくらいに。


「なんだよお前、梨乃がいなくなって少しは強くなったみたいだな」


啓治がニヤけた笑みを浮かべて梨乃の名前を出す。


その瞬間体がカッと熱くなるのを感じた。
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