記憶ゲーム
☆☆☆

いくら自転車を用意してきたといっても、そのスピードには限界がある。


先生を追いかけて校門から出たもののその幅はどんどん広まるばかり。


「くそっ! 絶対に見失うなよ!」


「うん!」


僕と啓治は立ちこぎになって先生の車を追いかける。


先生の家の場所は知っているから仮に見失ったとしても大丈夫だ。


自分にそう言い聞かせてペダルをこぐ。


車は右折して大きな道路を真っ直ぐに進む。


けれどそれは先生の屋敷がある方向じゃなかった。


どこかへよってから帰るのかもしれない。


もしかしたら、犯行現場かも!


そう思うと、心臓がドクンッと大きく跳ねた。


ついに僕らは先生の正体を知ることになるかもしれないのだ。


そう思うとペダルをこぐ足にも自然と力がこもった。


どれだけ距離を離されても、絶対に見失うものかと食らいつく。


10分ほど走ったところで、先生は大型スーパーの駐車場に入って行った。


どうやら買い物をしてから帰るみたいだ。
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