記憶ゲーム
先生だって人間だから買い物くらいする。


わかっていたことだけど、こうして私生活をのぞいているとなんだか不思議な感覚がしてきた。


「ここで先生が出てくるのを待とう」


駐車場の奥に自転車をとめて、啓治が言う。


僕はうなづき、啓治の自転車の隣に自分の自転車を止めた。


その途端我慢していた尿意が襲ってきた。


実は学校で先生が出てくるのを待っている時から、ずっと我慢していたのだ。


「ご、ごめん啓治。僕トイレ……」


もじもじしながら言うと、啓治は呆れた表情を僕へ向けた。


「なんだよこんなときに、我慢できねぇのか?」


「ずっと我慢してたんだ。すぐ戻るから」


僕は早口にそう言うと、店の外にあるトイレへと走ったのだった。
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