記憶ゲーム
☆☆☆

スーパーのトイレは予想よりもずっと綺麗だった。


掃除が行き届いていて、嫌な臭いもしない。


個室を除いてみるととても広くて花の芳香剤の香りがした。


そんなトイレで落ち着いて用を済ましていると、スマホが震えた。


このタイミングで……。


一瞬戸惑ったが、もしかしたら大夢から返事が来たのかもしれないと思い、僕は片
手でスマホを取り出した。


画面を確認して、首をかしげる。


それは啓治からの着信だったのだ。


どうしたんだろう。


トイレに行くって、ちゃんと伝えたのに。


そう考えてから、ハッと息を飲んだ。


まさか、なにかあったんじゃ!?


そう思い慌てて電話に出た。


「も、もしもし!?」


話ながら用を済ましてズボンを引き上げる。


しかし、片手だからうまくいかない。


『やばい、ばれた!!』


「え?」


啓治の焦る声が短く聞こえた次の瞬間、電話は切れた。


僕は呆然としてスマホを見つめる。
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