殺人感染
そして、容赦なく何発も発砲する。


外を逃げ惑っていた人々は次々に倒れ、血がコンクリートを染めていった。


「なにこれ……!」


あたしは手で口をふさいでその光景に目を見開いた。


「警察官に感染したんだ」


純也が顔をしかめて言う。


そんな……。


助けてくれるはずの存在が殺人鬼になってしまうなんて、考えてもいなかった。


これじゃいつまで待っても助けは来ないということになる。


「ど、どうしよう」


「もうこの町から出るしかないと思う。隣町まで逃げることができれば、安全だと思う」


「この町から……」


学校から出ることだって難しいのに、そんなことができるんだろうか?


あたしは窓の外で倒れている人々に視線を向ける。


きっと学校から出て外の様子を目の当たりにすると、もっとひどい惨劇が待っているのだろう。


想像するだけで背筋が寒くなった。


両親は生きているんだろうか……。


そう考えて気弱になってしまいそうになる。


「俺がついてるから、絶対に大丈夫だから」


純也があたしの手を痛いほどに握り締める。


いつの場面でもあたしの前に立ちはだかって守ってくれた純也。


ここまで来てあきらめるなんて嫌だった。
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