殺人感染
あたしは大きくうなづいた。


「うん。わかった」


今は自分たちを信じてやるしかないんだ。


「よし、じゃあ行こう」


そう言って純也が窓から離れたときだった。


廊下の中央あたりに女子生徒が立っていてあたしたちは悲鳴を上げてしまいそうになった。


いつの間にそんなところに立っていたのか、気配は全くしなかった。


突然出現した女子生徒に心臓が早鐘を打ち始める。


「雪……?」


あたしは震える声で立ち尽くしている女子生徒に声をかけた。


その生徒は制服も髪の毛もボロボロになっていたが、間違いなく雪だったのだ。


あのとき殺人鬼たちに襲われることなく、ちゃんと逃げ切れていたようだ。


そう思うと心の底から嬉しかった。


雪が生きていたということは、香だって生きているかもしれない。


でも……。


あたしは泣き出してしまいそうになりながら、目の前の雪を見つめた。


雪の目は灰色に濁っていたのだ。
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