殺人感染
雪は脱脂綿を自分の耳に押し当てて痛みを我慢している。


「雪、これ痛み止め」


「ありがとう」


雪は薬を水なしで飲み込んだ。


こんな状況だから、贅沢は言っていられない。


しかし、止血している雪の顔色はどんどん悪くなっていく。


もともと色白な雪だけど、今は真っ青だと言っても過言ではなかった。


「大丈夫? ちょっと横になる?」


声をかけるが、雪は左右に首を振った。


「思い出したの。自分がやったこと」


小さな声でそういわれ、あたしは言葉を失った。


やっぱり雪も誰かを殺してしまったんだろうか。


自分の意思とは関係なく、操られて無理やりに。


「それは雪のせいじゃない」


強い声で言ったのは純也だった。


純也がジッと雪を見つめている。


「でも、あたし、確かにこの手で……!」


「そうだとしても、それは雪のせいじゃない」


そんな言葉気休めにしかならないかもしれない。


実際に殺人を犯してしまった人間のつらさなんて、きっとあたしたちには理解できないから。
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