殺人感染
☆☆☆

1階の廊下に差し掛かったとき、さっき電話で聞いた笑い声が聞こえてきて足を止めた。


こんな状況で一体誰が笑っているんだろう?


今まで出会ってきた殺人鬼は笑い声なんて上げていなかったから、これは普通の人間で間違いなさそうだった。


それにしては異質な笑い方。


まるで心が壊れてしまっているような笑い方だと感じた。


「あははははははははは!」


途切れることなく聞こえてくる声に恐怖心を抱きながらも、あたしは一歩一歩その声に近づいていく。


電話から聞こえてきた声と同じだということは、そこに香もいるかもしれないということだ。


「あははははははは! あははははははは!」


声はどんどん近くなっていく。


それは最初にあたしたち4人が逃げ込んだ教室内から聞こえてきていた。


あたしは閉じられたドアの前で一度立ち止まり、モップを握りなおした。


窓が割られているため、そこから中をのぞきこむ。


その瞬間、教室の中央で笑い転げている女子生徒の姿が見えた。


髪を振り乱し、手には血のついた包丁が握り締められている。


一見誰だかわからなかったけれど、それは香で間違いなさそうだった。


あたしはハッと息を飲んでドアから教室へと飛び込んだ。


「香!?」


声をかけた瞬間、足を止めていた。


教室内には複数の生徒が横倒しになり、血を流しているのだ。


香はその真ん中で笑い続けている。
< 112 / 138 >

この作品をシェア

pagetop