殺人感染
「あ、図星だ! 顔真っ赤だよ!」


雪がきゃあきゃあと楽しげに笑う。


「ちょっとやめてよ」


あたしは両手で頬を包み込んで眉間にシワを寄せた。


「でも本当にいいよね、彼氏」


ふと、雪が真剣な表情になって言った。


雪のように綺麗な頬はほんのりとピンク色に染まっている。


その様子にあたしは目を見開いた。


雪の視線を追いかけてみると、その先にいたのは小村紀夫(コムラ ノリオ)くんだ。


たしか自分から立候補して図書委員会に入っていて、本が大好きだと言っていたっけ。


薄い銀縁めがねの奥の目は意外と大きくて、そして優しそうに見える。


もしかして、小村くんのこと……?


「もし自分が殺人鬼になったらどうする?」


あたしの考えを遮断するように香が言った。


視線を戻すと、香はおもしろいものを見つけたような表情をしている。
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