殺人感染
「自分にとって大切な人を殺してしまいそうになったら、どうする?」


更に畳み掛けるように質問する香。


あたしは瞬時に純也へ視線を向けていた。


純也は窓際で数人の生徒たちと楽しげに会話をしている。


「そんなの、どうにかして止めるよ」


答えたのは雪だった。


「でも、雪は操られている状態なんだよ?」


「それでも止める! 好きな人を殺すなんて絶対に嫌だもん!」


珍しくムキになっている雪に、香は驚いている様子だ。


「そうだよね。あたしも嫌」


あたしは雪に賛同して言った。


好きな人を自分で殺してしまうくらいなら、いっそ殺されたほうがマシだと思える。


「そっかぁ。でも、あたしもそれは同じかな」


腕組みをして、真剣に考えた様子で香が言った。


「え、香って好きな人いるの!?」


あたしは驚いて聞いていた。


香は腕組みをしたままこちらへ視線を向けて「好きな人くらいいるに決まってるでしょ?」と、言ってきた。


あたしは雪と目を見交わせる。


申し訳ないけれど、この中で一番恋愛と遠いのは香だと思っていた。


それだけに衝撃は大きかった。


「それって誰?」


質問したのは雪だった。


雪は好奇心で目を輝かせている。
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