殺人感染
「雪。小村君は逃げ切ったかもしれないでしょう?」


香が優しく諭すが、雪の泣き声は止まらない。


あたしは黙ってその光景を見つめているしかなかった。


今あたしが口を出せば雪を余計に混乱させてしまう。


そっとその場を離れ、純也の隣へ移動した。


「大丈夫か遥」


「うん。あたしは平気」


そう答えても、自然とうつむいてしまう。


雪がこんなに苦しんでいるのに、あたしにはなにもできない。


それが苦しかった。


「雪ももう少ししたら落ち着くだろうから、きっと大丈夫だから」


純也はそう言ってあたしの手を強く握り締めてくれたのだった。
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