殺人感染
最初に目に入ったのは灰色の目をした男子生徒だった。


その生徒は素手で窓を割ったようで、握り締めた拳にガラス片が刺さって血が流れていた。


しかし本人はそんなこと気にしていない。


あたしたちを見つけたことを喜ぶように、教室内へ入ってきたのだ。


「まずい!」


純也が声を上げ、中庭に通じている窓の鍵を開けた。


その間にも窓は割られ、次々と殺人鬼たちが教室内に入ってくる。


武器をひとつも持っていないあたしたちが戦える人数ではなかった。


「ここの窓から逃げるんだ!」


今だ座りこんだままの雪へ声をかける純也。


しかし、その体はピクリとも動かなかった。


まるでここで襲われることを望んでいるかのようにも見えて、背筋が寒くなる。


「雪!?」


あたしが叫んでも雪は反応しない。


次々と入ってくる殺人鬼へ視線を向けて、微笑すら浮かべている。


「遥、先に逃げよう」


純也に手を引かれ、窓から外へと逃げ出した。


「雪、大丈夫だから、一緒に行こう?」


教室内では香が雪に根気強く話しかけている。


お願い、早く逃げて!


そう思いながらも、あたしは純也と共に走り出したのだった。
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