殺人感染
☆☆☆

しばらく放送室の床で座り込んでいると、少し眠ってしまっていたようだ。


目を開けると純也の寝顔が近くにあって、思わずドキッとしてしまう。


こんな状況でも2人でいられて本当に良かったと思えた。


あたし1人だったら、きっととっくの前に諦めてしまっていたと思う。


あたしは純也の長いまつげに見とれる。


こうしていると、殺人鬼の感染だなんて嘘みたいだ。


ずっとずっとこうしていたい。


しかし、血なまぐさい臭いが鼻腔を刺激して嫌でも現実に引き戻されてしまう。


上半身を起こして放送室の中を確認すると、女子生徒の遺体があるのだ。


よくこんな場所で眠れたものだと、我ながら関心してしまう。


あたしももう普通の精神状態じゃなくなっているのかもしれない。


なにが普通でなにが正義なのかもわからなくなった空間で、あたしと純也の存在だけがリアルに感じられた。


「遥……」


少し寝ぼけた声が聞こえてきてあたしは純也を見下ろした。


「おはよう純也」


「俺、寝てたのか」


「あたしも寝てたから大丈夫だよ」


そのくらい2人とも疲れ果てていた。


「外の様子はどうだろうな」


そういって純也が立ち上がったので、あたしは後ろから抱きついた。
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