殺人感染
純也の暖かさを感じて目を閉じる。


「どうした?」


「もう少し、このままでいたい」


こんな言葉今まで使ったことがなかった。


きっとこれから先も恥ずかしくて使うことはないと思う。


純也は一瞬戸惑ったようにみじろぎをしたが、すぐに体の向きを変えて抱きしめてくれた。


このぬくもりを感じていられる間はあたしは大丈夫だ。


純也の鼓動もしっかりと聞こえてくる。


そして自分の鼓動も聞こえてきた。


純也の手があたしの頭を優しくなでた。心地よさに思わず目を閉じる。


このまま時間が止まってしまえばいいのに……。


そう思っても、現実は非情だ。


廊下から人の声が聞こえてきて純也はあたしから身を話した。


ドアに近づき、廊下の様子を伺う。


人の声は聞こえてくるけれど、ちゃんとした会話がなれていることがわかった。


廊下にいるのは殺人鬼ではないということだ。


少し安心しながらカギを開け、廊下に出た。


そこにいたのは5人の男子生徒たちだった。


なにかを取り囲んでいる。


「なにしてるんですか?」


先輩かもしれないので、純也が敬語で声をかけた。
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