死なないあたしの恋物語
「俺の名前、覚えててくれたんだ」


白坂君は嬉しそうに笑顔になった。


その笑顔が大昔付き合ったことのある男性とダブって、心臓がドキリと音を立てる。


たしか、公園の石段で助けてくれた彼も、白坂君みたいに優しい笑顔をしていたっけ。


「もちろん。白坂君は何組?」


「A組だよ」


「あたしと一緒だね!」


嬉しくて思わずその場で飛び跳ねる。


500年も生きても自然とこういう振る舞いができるのは、ひとえに13歳で年齢がとまってくれているおかげだった。


2人で肩を並べてA組へ入ると、そこには見知らぬ生徒ばかりがひしめき合っていた。


当然のことだけれど、胸の中に隙間風が吹いていくのを感じる。


それを少しも顔に出さないまま、あたしは黒板に書かれている席順を確認した。


あたしは浅海だから、入り口の列の一番前だ。


出席番号順に机が並べられいるところは、数十年前から変わっていないみたいだ。


「千奈おはよー!」


席について教科書を引き出しにしまっていると、元気な声が聞こえてきた。


視線を向けると久島真夏(ヒサシマ マナツ)が駆け寄ってくるところだった。


真夏はその名前の通りよく日焼けをしていて、ショートカットが似合うサバサバとしたタイプの子だ。


その後ろからやってきたのは汐入綾(シオイリ アヤ)。


綾は真夏に比べればおとなしいタイプで、読書家だ。
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