死なないあたしの恋物語
「不老不死の魔女が実在するのなら、その人はとても寂しい思いをしていると思うよ? 好きな人も大切な友達も、みんな自分より先に死んじゃうんだから」


あたしが真っ直ぐに美鈴さんを見てそう言うと、美鈴さんは視線を外して後ずさりをした。


「寂しい人を更に追い詰めて傷つけるのは違うよね? あたしなら、その魔女と友達になりたいと思う」


「そうだよね。あたしもそう思うよ」


綾があたしの意見に賛同してうなづいてくれた。


「魔女だとしても、友達は友達だもんね」


真夏が言う。


それだけじゃない他のクラスメートたちも同じように口をそろえて同意してくれる。


「ま、魔女と友達とか意味わかんないし」


さすがの美鈴さんも大人数を敵には回せないようで、雅子さんと2人でそそくさと教室を出て行ってしまった。


それを見て、あたしは真夏と綾と目を見交わせた。


そして3人同時にプッと噴出して笑う。


「今の千奈すっごくかっこよかった!」


「あははっ! でもめっちゃ緊張したよ! 美鈴さんたちを怒らせたら怖そうだもん」


「千奈なら大丈夫だよ。だって、あたしたちがいるんだもん」


「うん。そうだね。本当にありがとう、2人とも。でも、できれば美鈴さんや雅子さんとも仲良くなりたい。だって、たった1度きりの中学2年生なんだもん」


誰とも争いたくない。


全員と仲良くできないことくらいわかっていたけれど、無駄な喧嘩はしたくなかった。


「改めて、お帰り、千奈」


「お帰りなさい、千奈」


2人に言われてまた泣きそうになってしまう。


今年はやけに涙もろい1年にもなりそうだ。


「ただいまっ!」


あたしは泣き笑いの顔で元気いっぱいに答えたのだった。
< 112 / 126 >

この作品をシェア

pagetop