死なないあたしの恋物語
2人に強引にトイレに連れてこられたあたしは鏡の前に立っていた。


美鈴さんがバッグの中から化粧ポーチを取り出して、あたしの前髪をヘアピンで止める。


その間に雅子さんが化粧下地を取り出していた。


「まずはこれを塗って」


「う、うん」


あたしは2人に言われるがままに化粧を始める。


イジメられるわけではなさそうなので、ひとまずはやってみることにした。


今日の試合見学に来るのも、2人が誘ってくれたのだ。


「で、最後にグロスをつけるの。これ、色つきだからほんと可愛いから」


雅子さんに手渡されたグロスを塗ると、唇がうるうると輝いきはじめた。


「どう?」


美鈴さんに聞かれてあたしは鏡の中の自分をまじまじと見つめた。


そこにいたのはいつもの自分じゃなかった。


まるで見慣れない他人みたいに見える。
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