死なないあたしの恋物語
「千奈は、千奈でいいよね?」


真夏に問いかけにあたしはうなづく。


「う、うん」


「千奈」


洋人君に名前で呼ばれてあたしはオーバーなくらいに大きくうなづいてしまった。


綾が後ろで小さな声で笑っているのが聞こえてくる。


あたしはこの子たちよりも随分長く生きている先輩なのに、連来関してはまるで間逆になってしまう。


仕方のないことだけれど。


あたしは緊張をほどくように大きく息を吐き出して、全身の力を抜いた。


「こんなところで会うなんて運命じゃない?」


真夏があたしに顔を近づけて小声で言うので、更に体温が上がっていく。


「な、なに言ってるの」


あたしは慌てて真夏の腕を掴んでとめた。


これ以上洋人君の前で余計なことを言ってほしくない。


余計に意識してしまって、まともに顔をみることもできなくなってしまう。


「せっかくだし、洋人が千奈を家まで送ってあげなよ」


真夏の言葉にあたしは目を見開いた。


「な、なに言ってるの。そんなの迷惑に決まってるじゃん」


早口で言うが、洋人君はまんざらでもなさそうな顔をして「別にかまわないよ」と、うなづく。


あたしの心臓の速さなんてきっとみんなわかっていないんだ。


「千奈が迷惑じゃなければ、だけど」


そんなことを言われたら断れるわけがなかった。


「お、お願いします」


あたしはおずおずとうなづいたのだった。
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