死なないあたしの恋物語
それから2人でどんな会話をして歩いたのかあまり覚えていない。


嬉しくて舞い上がってしまって、会話の内容を忘れるなんて何十年ぶりのことだろうか。


長年生きているのに自分から避けてきた物事に対してはド素人そのものだ。


「もう、ここでいいから」


家の近くまで来てあたしは足を止めた。


「そう? ちゃんと最後まで送るよ?」


「うちのお母さんちょっとうるさいの。あまり男の子と一緒にいることろを見られたくないんだよね」


「そっか、それなら仕方ないね」


洋人君はそう言うと、名残惜しそうな表情を浮かべてあたしに背を向ける。


「また、学校でな!」


そう言って片手を挙げられたから、同じように片手を挙げる。


そして、これはちょっと予想外の学生生活になりそうだと、内心考えていたのだった。
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