死なないあたしの恋物語
「ってことは、綾も誰か好きな人がいるの?」


勢いよくきくと綾は一瞬視線を泳がせ、それから左右に首を振った。


「そうじゃないの。あたし読書が好きだから、こういうのもつい手を出しちゃうんだよね」


早口になる綾に不振な視線を向ける。


本当だろうか?


嘘をつく人は人の目を真っ直ぐ見なかったり、聞かれてもいないことを答えたりする。


長く生きてきた中で、それくらいのことはもう知っていた。


今の綾は嘘をついているように見える。


でも、それは別に悪い嘘じゃない。


「そっか。じゃあ、好きな人ができたら、あたしにも教えてね?」


そう言うと、綾は少し頬を染めて、うなづいたのだった。
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