死なないあたしの恋物語
☆☆☆

人の好みは一概には言えない。


十人十色とはよく言ったもので、好きなタイプをランク付けしたところで、それが洋人君に当てはまるかどうかは別問題だ。


そんなこと理解しているはずなのに、綾から貸してもらった本を夢中になって読んでしまった。


前に中学校に通っていたのは何十年も昔のこと。


こんな本を読むのははじめての経験だったのだ。


「今では子供向けの楽しい本って沢山出てるんだよなぁ」


本に視線を落としたまま呟く。


今まで沢山の本を読んできた。


男性向け、女性向け、子供向け、大人向け。


どんな本でも選り好みせずに読んでみれば、そのどれもにそれぞれの魅力があることに気がつかされる。


その中でも、あたしが13歳でとまっていることが原因なのか、子供向けの作品はいつまでたっても心に刺さるものがあるのだ。


そうだ、来年の13歳をやるときには本を沢山買ってずっと読んでみよう。


ふと思い立った来年の予定に一瞬胸が躍り、同時に沈んでいく。


来年になってもあたしは13歳。


洋人君と一緒に3年生にあがることはできない。


そんな当たり前のことを思い出してしまって、あたしは左右に首を振った。


1年間は楽しむと決めたんだ。


それなら、思いっきり楽しまないと損だ。
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